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#165. wan shan ling

新しいwan shan ling の作品"不条理なジレ"について。 今年辿ったwan shan lingの道筋から外れたようだが繋がっている。 不条理とは、筋道の通らないこと。道理に合わないこと。 アートや文学など芸術における思想や哲学的概念のひとつ。 今回のwan shan lingの不条理さに対する取り組みには、前提として道徳性という視点が存在する。 リチャードタトルの木に対するイメージ。 「芸術が道徳から自由であることを望んでいた」本質。 それでもこの道徳的な素材に惹かれるタトルの双極的であり無極とも言える思想と表現との関係性。 ここに、実用品を不条理なものに変換させるシュルレアリスム哲学を対峙させたとき、ファッションで今やるべきことが定まったと言う。 服という道徳的なものに不条理さを持ち込むこと。 本来の役割、期待される機能を失うことで生まれる違和感や不協和音がデザインとして機能する。 この点に集中した今回の作品はここ最近の表現から比べると抽象的でミニマルだ。 しかしwanさんの拡張的デザイン表現はむしろ広角化している印象。あらゆる主体の仮説と実証が形となっている。 以前、人に不快感を与えるために服を作っていると言っていたことがあった。 極論ではあるが真理的で私はとてもいいなと思う。新しい表現はこういうところに生まれるのではないだろうか。 今回の作品に不快感はあまり持たないけれど、圧倒的に不自然で、途方もなく不条理です。

#164. CB

謎多き人物[user]によるプロジェクトCBについて。 今年の3月にリリースした人体パーツのアクセサリーたちはまだ記憶に新しいかと思います。 この小さなイントロダクションを経て、CBのファーストシーズンとなるCOLLECTION 1より待ち望んだウェアピースが届きました。 wanさん、Amandaさんに続きスペシャルがまた増えた。 秘匿性はCBの創造活動のサインです。 COLLECTION 1を通じて彼は名前、顔を明かしていない。それは本コレクションにおける必然的行為だと想像する。 COLLECTION 1はヘルシンキのAALTOカレッジ 2024年BA FASHIONグラデュエートショーにて発表されたのですが、学生さんでこの姿勢ははなかなか稀有だと思うしこのコレクションがロジカルで作者の哲学と密接にあることがよく伺えます。 "ホーム"という本来もっともプライベートで安全性が確保された領域が、デジタル化された現代社会において、プライバシーの侵害、情報流出や搾取といったサイバーリスクのみならず、フィジカルな攻撃や人体被害へと発展し得る危地となっている事実を提示し、更にそこに如何に対抗し得るかまでが表現の中に組込まれている。 よりプライベートで他者を気にしない部屋着のあり方、何年も前から着続けているかのようなサイズも合っていない、くたびれたプリントや生地。ボサボサの髪にヘアバンドを巻き布団にくるまってサイバー世界へとアクセスする日常。 その合間に必要に駆られて外出する際の上着を思いやりなく羽織る状況や感覚をたぶん私たちの誰もがリアルに理解できると思う。 コレクションの全体を店頭でお見せできたらよかったのですが、彼のスケジュールの都合と、ヘビーピースの諸々の調整に時間を要するため、まずカットソーなどのルームウェアと一部のアクセサリーを先に入荷しました。 Unabomber(ユナボマー、アメリカの天才数学者でテロリストTheodore John Kaczynskiの通称) と背中の"Surrogate Activity"(代理活動-Unabomberマニフェストより)、Right to be forgotten"(忘れられる権利)やネットカリカチュアなど、コレクションに通じるメッセージが各ピース...

#163. Amanda Brown

Amaanda BrownがいるCasimir Pulaskiday. は久しぶり、2年ぶりだ。 Amandaさんがいるというのはいいもんだ。 いつになってもいいから、もしAmandaさんが何かをつくるのならば、私の店で発表させてもらいたいと願っています。 昨年はAmandaさんのフリーランス業務が多忙で自身のクリエイティブワークの時間がとれず、今年に入ってからその時間を確保してまたAmanda Brownのプロジェクトが再開された。 最初のサンプルを送ってもらってからのこの数ヶ月、Amandaさんとのやり取りの中で改めて彼女のクリエイションの豊かさと技術力、自身の仕事への責任感、そしてAmandaさんの優しさを再認識しました。 異国の小さな店に対しても労を厭わず向き合ってくれたことに心からの感謝を込めて、届いたばかりのAmanda Brownの最新作について書きます。 Amandaさんのファーストサンプルはいつも白だ。 送られてきた躍動的な白たちを前に、また新しく特別なものに出会えることが確定した。 今回もAmandaさんはヴィンテージのTシャツを使ったアップサイクルプロジェクトに取り組むらしい。 これまでにCPD.では5回のアップサイクルプロジェクトを発表し、うちTシャツを用いたものは3回目となるが、印象はこれまでの作品に近いものの明らかに進化したテクニックに目を疑い胸踊る。 まずどうしたらこれができるのか見当がつかない。自分にわかるわけがないのは当然なのだがやはりAmandaさんが日々可能性を広げる生き方をしているのだと思った。偉そうに言いたいわけではなく私は本当に尊敬しているのだ。 1本ずつ紐状カットされた縦のヴィンテージTシャツと、その一本ずつを通して面にさせるためのチューブが連なる横のニットラインで構成されたTシャツとドレスがAmanda Brownの最新作です。 ニットパーツを見ると上下で異なる編み地のダブルフェイスになっている。 このプロセスがわからなくてどうやったのか聞いてみたら、まずダブルベッドの編み機で上下のパーツを作り、その後にチューブができるように上下をコネクトしたのだそう。ゾッとするプロセスだった。 Amandaさんのバランスでチューブに通されたTシャツ紐はプレイフルで愛らしく、アットランダムであり...