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#159. Emily Frances Barrett


買付の旅の途中、ロンドン、パリが終わり今ミュンヘンへと列車で移動中。5時間半だって。

直前に済ませた確定申告が圧をかけてくるがそれ抜きでもちゃんとしないといけない。
あまり多くを欲するな。そんなに買えないんだよ。おまえさん。

ロンドンではEmily Frances Barrett に会いに行きました。
2度目の訪問。今回もEmilyさんから大切なものをいただいた。
Emilyさんとの出会いは少し前で、ロンドンの合同ショーにあった小さなショーケースに立ち寄ったのが5年前、2020年のことです。
その時はやはり買えず、いただいたカードも不覚にも失くしてしまったのですが、とにかく素敵だったことを脳みそが覚えていて、定期的に思い出してはその時撮った作品の写真を開いて眺め、あぁあの人は誰だったかな、素敵だったな、また会いたいな。と失くしたカードをまたごそごそと探す、というサイクルを繰り返していた。

そして昨年ふと気づいた。そうか過去の情報を遡ったら出展者リストからあの人を見つけられるのでは!と。遅。
それでその年に訪れたいくつかの展示会のデザイナーリストを探してついにEmily Frances Barrettに辿り着いたわけです。
初めて開いた彼女のInstagramには私の記憶に漂っていたイメージがあって、スタイルやマテリアルはアップデートしていたけれど、やっぱり彼女だと確信。よかったまだつくっていた!
コンタクトをとってみたらとても温かい返信をくれ、4年越し(当時)にEmilyさんと彼女の作品に再会することができた。
聞いたらあの時のショーケースが唯一のファッション展示会への出展だったそうでそこで出会えて本当によかったと思う。

Emily Frances Barrett は、Sarabande(Lee Alexander McQueen が設立した若手アーティスト支援レジデンシー)所属アーティストとして活動をスタートさせ、現在もロンドンのSarabande foundationから数ブロック離れたスタジオで製作活動を行っている。
メタル加工を軸に、植物や貝殻、化石などの自然物、タバコの吸い殻プルタブなどの廃材、またテムズ川岸で拾った陶片やガラスなどを組み合わせてジュエリーやオブジェを製作しています。

Mudlarkという職業がイギリスの歴史で実際に存在する。
かつて世界最大の港町として繁栄したロンドンのテムズ川一帯には多数の有価物や考古学的に重要なものが埋もれていると言います。
そのテムズ川の土砂から漁った宝石や金属、他あらゆるものをお金に変えて生計を立てる人のことをMudlarkと呼ぶ。
現在も趣味で干潮時に採掘を行う人もいるそうでEmilyさんものそのひとり。彼女のスタジオには戦利品がたくさんたくさんあって、探求と発見はこうした自然や歴史の中から生まれます。
作品を通して聞くストーリーはどれもとても発想に満ちて素敵です。
こう書くと自然派思想の源流主義な人に聞こえるがEmilyさんはそうでもない。
冷静だしファッションにも寛容だし、あらゆる流れを包括的に見ていると思う。Emilyさんと話すのは本当に楽しい。あとかっこいい。

また新しくEmily Frances Barrettの作品を迎えます。今回のお持ち帰りが5スタイル、あと少しだけオーダー分もできあがったら届きます。楽しみだ。

ミーティングの最後にたまたま手に取った一冊の本からEmilyさんの更なる素敵な部分を知った。

それはチェコ出身のMiroslav Tichý(1925 – 2011)という、共産主義社会から断絶し、靴箱やブリキ缶などで作った自身のカメラで撮り続けた写真家の本で、彼の生き方、作品に深く感銘を受けたEmilyさんは、まだジュエリー製作をスタートする以前に一本のフィルムを作ったそうです。
そこにはEmilyさんが想像したMiroslav Tichýの部屋が写されており、すべてEmilyさんが作ったミニチュアの模型です。

そんなつもりもなかったと思いますが、私の熱いリクエストに応え作品の一部を見せくれました。
愛とか敬意とか関心とか、感情の動きが『つくる』ということに直結するんだEmilyさんは。
今も一貫している。すごいな。
フィルムもシェアしてくれたのでここにもシェアします。
https://www.youtube.com/watch?v=gLUxo9PAJjE