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#15. FEDERICO CINA

不安定


 
久々のイタリアン、FEDERICO CINA
ところでイタリアの服ってなにか違います。
意図はないのですが我が店にはイタリアブランドが少ないです。意図はない。
でも違うお店でイタリアンデザイナーの服を見たときもやっぱり、あ、いいなと思う。
艶がある。色気?服には必要不可欠ですね。ザ・オリジンオブファッション。

そう、FEDERICO CINAの服もまた。
春夏では3着をご紹介しました。

彼を知ったのがAW18でして、前のコレクションのストックあるかと聞いたらないけど作ってやると言われたのでアーカイヴから欲しいのを作ってもらった。
彼の服は何せデカい。メンズだからね。でもこんなちょびっとオーダーなのにちゃんとレディスサイズにグレーディングしてくれてありがたい。
今回のAW18は、閉塞と開放の心の関係性を幼少期の感情にクロッシングした叙情的なコレクション。ナイーブな心の揺れ動きが、色、素材、プリントからじわりと滲み出ます。

パステルカラーでいてハッピーを感じない。決してくすんでるわけではないのだけど、何か陰な気配が漂っている。この感覚はうまく表現できないのだけど、きっとストレスとフリーダムのふたつの感情の狭間ではなかろうか。メタリックな光沢もどことなく金属のひんやりとした触感をイメージします。
不安定は個々の色のみならず構成にまで及び。
例えば5色の色を使ってコレクションを完成させなさい、という問いがあったとして、彼のアンサーは、赤、ペールグリーン、ペールパープル、ベージュ、ピンク。

ハーモニーない。喧嘩になる。でもそのアンコントロールな不調和が今とても心をくすぐりますね。
パターンは意図的に違和感を持たせている。子供が父親の巨大な服を、さも真剣な表情で着ているのを想像する。
ナイロンサテンにメッシュ、ネオなムードを醸し出す異素材使いも決してストレートではなくて、違和感のある形、色を更に助長させている。
このメッシュのジャケットなんかヒリヒリします。前回のヒュージパンツと同じ手法ですが、ひたすらに直線でたたかれた赤メッシュの列が強いです。

しかしよく見ると、パーツごとにメッシュを生地にたたいたあと組み立てているので、相当めんどくさい縫製仕様になっているのが明らか。ジャケット作るの自体手がかかる上に全パーツにメッシュがくっついているわけだもの、その前にメッシュつけるのだって吐きそうだ。
仕立てはとても美しい。総裏地に内ポケットもついてジャケットとしてもハイクウォリティです。じゃないとこのやんちゃな服はやんちゃで終わってしまう。さすがイタリー。
着ていくうちにメッシュがクラッシュして直線に曲線が混じり、面白い表情が出来上がりそうです。ベースの肉厚で高級感あるギャバジンがきっと良い仕事をしてくれるはず。

もう1着、このお目を引くお方は、防弾チョッキを彷彿とさせるプロテクション度高いダウンベストに属します。

中はダウン。表のナイロンサテンと裏のベージュのコットンツイルのマッチングがおダサでたまりません。
ベルトはアタッチャブル、肩も全取れです。あんまり意味ないですが、セオリーに基づいて。もちろんベルクロもベージュ。
コートの上とか楽しいだろうな。コルセット風にギュッとしたり。あとフォーキーなドレスとか。
もう違和感たっぷりに、真剣に着たらいいと思います。

全てにおいて不安定なFEDERICO CINAの服。彼のデザインの根底にはネガティブな視点があります。その誰もが持つエッセンスを時に直接的に、時にオブラートに包みながら服にしていく彼に私はとても興味があります。アーカイヴも見てみてください。やり過ぎる方向が他とちょっと違う。そして、実は日本でファッションを学んでいたり。やっぱり気になるなる。
例のごとく、点数少ないので気になる変態さんは是非に。

※来週末、9/7,8,9 のオープンの後、買付のためお休みに入ります。