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#102. wan shan ling

 
またクセモノを作ってきたぜ、wan shan ling.
はてどう向き合うべきか。軽いのに重すぎる。

やっとCasimirさんに服を作ってくれた。長いこと待った。いろいろタイミングもあるしね。
これまでは渾身の一球ずつで勝負していましたが、今回は並びでお願いしました。私からのオーダーは「ベスト」 「3着」。

狭いキャンバスの上に、名前のない色を幾重にも重ねて白という色を作った、そういうイメージ。あ、それは光か。

一着ずつに、彼が見た非凡な景色をディティールに落とし込む。その作業はこの服自体の軽さに反比例するほどに重い。そうです、軽くて重いのです。
リネン、ウール、ナイロンと3着それぞれ異なる素材に色。バラバラに見えてしっかりと一点で繋がっています。

軽薄なリップストップナイロンを裏起毛メッシュが優しく裏で支えます。パフの上でパリパリと心地よい音を奏でるな。
更に。今回3着すべてに採用されているフラシ芯(表地に接着しない状態の芯、工程としては接着芯より手間が掛かるが接着しない分ふんわりとしや柔らかな風合いが保たれる、更に着用の中で接着面が剥がれる心配がない)も、wan shan lingの服に艶と高級感を宿すひとつの重要なメソッドです。

高い高い煙突からからは波動が空気を伝って歪む空(ミッドナイト)。

好きなのはこの星留めです。賛否あるかもしれないけれど。
自分はこの服のスピードを減速させる無数の点々は隠しきれない手仕事のプライドと捉えて大切に思おう。wan shan lingのアイデンティティだ。

超短丈の2着は、ストレートに今の気分を突いてくる。短いの着たいよねーやっぱり。
ロング含め、どちらも下に厚手をもってくる事を前提にアームやネックを大きくとられているので、来たる秋冬も楽しそうです。
吊るされた卵とボーン。

切り替えではなくてなんと言うかセットバックしたディティールはwanさんの服によく見ます。他ではあまり見ない。
卵はポケットだそうです。

ベースにはリネンを。アイコニックなポップさの中にしっかりと艶があります。この服はどんな人が着るんだろう。

最後は黒。こちらはもうテーラーの気品です。実際にテーラーに技法を用いているそう。

美しいな。心地よい流れのある服だ。
本来であればキュプラがくる裏地にはブルーナイロンの子と同様の裏起毛メッシュを。グラデーションで現れた3本のスラッシュから覗くメッシュのリフレクションはスポーツのそれではなくフォーマルな艶へと変換された。ちらり。

3着すべてを紐付ける座標がお分かりだろうか。
これはなーーー、言わない。なら話題にするなと言われそうですが、すみません。
でも今回は言わずに乗り切ろうと思います。わかってもいいしわからなくてもいいな。
wan shan lingの服は、世界にひとつずつしかありません。置く店によって手法やスタイルを変え、ムードを店に寄せて服を作ります。
ということはこれがwanさんからみたCasimir Pulaskiday.ということか。
何はともあれ、評価して形として表現してもらえること、それを直に見られるというのは、これは非常にスペシャルなことだと思う。だから素直に受け入れたい。そしてありがとう。

本当に、この人が何を思い描いて服を作っているのか、そして着る私たちがどう応えられるか。そこを考えるともうプレッシャーしかないのですが、一周まわってただ自分で思い描いて着るしかない。
微かに香るバーチャル感、これは錯覚ではない。