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#107. LUNA DEL PINAL


 
LUNA DEL PINALの21AWについて。
うまく書けるか自信がないが、これをたまたま読んでくれた人が知ってくれることで、彼女たちのアクションにまたひとつ意味が増すと信じて書く。

コロナパンデミックの発生から3年目の入り口がちらつき始めた今、なおも世界中で困難な状況が続いている。
ご存知の通り(読んでくれている方は)、この世界情勢以前よりLUNA DEL PINALはグアテマラの現地職人の雇用、生活向上を大きな目的の一つとしてブランドの運営を行っている。
デザイナーGabrielaとCorinaは、今回更にレスポンシブルな姿勢でコレクションの発表へと至りました。

彼女たちが行ったこと、まず“ArteSano”という謂わゆる募金活動を行う団体の設立。困難な時期にも不可欠な、綺麗な水と食料をグアテマラの人々へ提供しサポートしました。
そして、できるだけ多くの人の手に“職”を与えたこと。(言い方が正しいのかがわからないけど。雇用の促進に加え、多様な職人技が組み合わされたユニークピースの完成形へと) 
更に、すべてをクリアにしたこと。
ひとつのコレクションが生まれるまでの過程で、何にどれだけのコストと自然への影響が発生したかを数値化しました。
生地をつくる糸から品質表示タグに至るまで、すべてがどこでどのように作られたかを明確にしています。
 
お時間があればLUNA DEL PINALのウェブサイトを見てみてください。
ブランドの姿勢と信念、職人さんたちのストーリーとプロセスが書かれています。必要なことしか書かれていないです。
https://www.lunadelpinal.com/

服、ですね。
前回21SSで発表されたラバーツリーヤーンで織られたストレッチシリーズは、リサイクルコットンと同じくリサイクルポリエステル糸を合わせることで春夏のそれよりも温かみと張りのある風合いになりました。
更に前回と違うのは、プリント。織り上げた後に製品プリントを施しています。
 
今回お迎えしたこちらは、お花がイメージソースとなっています。彼女たちにとってお花は意外にも初めてのアプローチだそう。先シーズンからリサーチを進め今回のプリントが完成しました。
グリーンブラックの背景に浮かび上がる花の褐色が燃え上がるようで心に残る。色が乗らなかった折りジワの白スラッシュと。

彼女たちが大切にしていることの一つが「不規則性」です。手作業故に完璧なものなんてできないしそれを望んでもいません。その謂わば“ノイズ”によってLUNA DEL PINALの服は完璧となるんだろう。服を見るとものすごく納得する。

今シーズン多く用いられているBasket weaveという織り方。縦糸と横糸を十字に織り上げたシンプルな織りです。
横糸にビーズをひとつひとつ通しながら織り込まれたこのシャツは、袖を通した時にもろにビーズ感を体感できる。
音、冷たさ、重み。全てを体で感じます。

着てみると思っている以上にこのベースのチェックが意味を持っていることにハッとしました。意外とトラッド。
たぶん首回りに一切ビーズがないこととあと襟の仕立てかな。こういう服らしからぬ存在感のある張りの強いシャツ襟。めちゃくちゃいい。
後ろからの景色は圧巻です。

同じ織りとシルエットですがオールブラックは全く別もので。

ホワイトビーズ(洗剤みたい)よりウール分量が多い。より粗野なテクスチャーでボソボソとしたネップもこのブラックシャツの定義の一部だ。うーんこれもいいな。だって黒が着たいんだもの。
白黒共に、裏の縫代は総バイピングで伸び留めもしっかりと優しい。
(Attention/ COLOUR MAY BLEED)

最後のこの子。世界一かわいいよ。
こんな愛おしいボタンホールを私は見たことがないけれど、あるのかな。
マーメイドラインのセミロング丈、襟やカフスは簡略化されデザインの重量感の取り方に本当に釘付けです。

すべてがそうで。LUNAさんの服はデザインの重量感の取り方が本当に素敵だと思ってしまう。何度も同じことを言いたい。
そういうところにグッとくるし、これがデザインといやつだよな、と偉そうにも頷く。

贅沢とか、豊さとか、をいつも問うてくるLUNA DEL PINALの服。
使命感と責任感は愛がないと生まれない。
温かさなんて、着た本人にしかわからないのさ。