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#164. CB


謎多き人物[user]によるプロジェクトCBについて。

今年の3月にリリースした人体パーツのアクセサリーたちはまだ記憶に新しいかと思います。

この小さなイントロダクションを経て、CBのファーストシーズンとなるCOLLECTION 1より待ち望んだウェアピースが届きました。
wanさん、Amandaさんに続きスペシャルがまた増えた。

秘匿性はCBの創造活動のサインです。
COLLECTION 1を通じて彼は名前、顔を明かしていない。それは本コレクションにおける必然的行為だと想像する。
COLLECTION 1はヘルシンキのAALTOカレッジ 2024年BA FASHIONグラデュエートショーにて発表されたのですが、学生さんでこの姿勢ははなかなか稀有だと思うしこのコレクションがロジカルで作者の哲学と密接にあることがよく伺えます。

"ホーム"という本来もっともプライベートで安全性が確保された領域が、デジタル化された現代社会において、プライバシーの侵害、情報流出や搾取といったサイバーリスクのみならず、フィジカルな攻撃や人体被害へと発展し得る危地となっている事実を提示し、更にそこに如何に対抗し得るかまでが表現の中に組込まれている。

よりプライベートで他者を気にしない部屋着のあり方、何年も前から着続けているかのようなサイズも合っていない、くたびれたプリントや生地。ボサボサの髪にヘアバンドを巻き布団にくるまってサイバー世界へとアクセスする日常。
その合間に必要に駆られて外出する際の上着を思いやりなく羽織る状況や感覚をたぶん私たちの誰もがリアルに理解できると思う。

コレクションの全体を店頭でお見せできたらよかったのですが、彼のスケジュールの都合と、ヘビーピースの諸々の調整に時間を要するため、まずカットソーなどのルームウェアと一部のアクセサリーを先に入荷しました。

Unabomber(ユナボマー、アメリカの天才数学者でテロリストTheodore John Kaczynskiの通称) と背中の"Surrogate Activity"(代理活動-Unabomberマニフェストより)、Right to be forgotten"(忘れられる権利)やネットカリカチュアなど、コレクションに通じるメッセージが各ピースにデザインとして乗っかっている。
CBの思想と仮説が座標となってこれらが繋がりひとつのコレクションとして体系化している状態がとてもおもしろいと思う。
マテリアルへの集中力、精巧なリアリズムも見逃せない。

昨年AALTOのショールームにお邪魔してBA卒業生のコレクションを見せてもらったのですが、(どの生徒さんも大変質の高いコレクションだった) その中に彼もいて、個人的にとても興味が湧いたのですが、この先MAに進む皆さまで学校側もセールス目的のショーではなかったこともあり、すぐにどうこうできるとは思っていなかった。
しかしそこからスタートした彼との何気ないやり取りの中で少しずつ動き出し、そして今年2月に改めてコレクションを見せてもらうため彼に会いに行き、いろいろを経て今がある。

とにかく初めてのことが多かった。
スクールワークやインターンなど過密なスケジュールの中で、作品を商品として店に卸すということに熱をもって誠実に取り組んでくれたからこのスピード感で実現できたと思う。

自律性。
COLLECTION 1における提議であり、彼自身のプライオリティだなのと納得できる。
あとたぶん彼を取り巻く人々や環境もきっと素晴らしいのだろうな。

まだ完結していない。
デジタル世界への警鐘の先にあるよりよい未来へ。
CBの考察後編はもう少しあとです。

ありがとう。