Skip to main content

#165. wan shan ling


新しいwan shan ling の作品"不条理なジレ"について。
今年辿ったwan shan lingの道筋から外れたようだが繋がっている。

不条理とは、筋道の通らないこと。道理に合わないこと。
アートや文学など芸術における思想や哲学的概念のひとつ。

今回のwan shan lingの不条理さに対する取り組みには、前提として道徳性という視点が存在する。
リチャードタトルの木に対するイメージ。
「芸術が道徳から自由であることを望んでいた」本質。
それでもこの道徳的な素材に惹かれるタトルの双極的であり無極とも言える思想と表現との関係性。
ここに、実用品を不条理なものに変換させるシュルレアリスム哲学を対峙させたとき、ファッションで今やるべきことが定まったと言う。
服という道徳的なものに不条理さを持ち込むこと。

本来の役割、期待される機能を失うことで生まれる違和感や不協和音がデザインとして機能する。
この点に集中した今回の作品はここ最近の表現から比べると抽象的でミニマルだ。
しかしwanさんの拡張的デザイン表現はむしろ広角化している印象。あらゆる主体の仮説と実証が形となっている。

以前、人に不快感を与えるために服を作っていると言っていたことがあった。
極論ではあるが真理的で私はとてもいいなと思う。新しい表現はこういうところに生まれるのではないだろうか。
今回の作品に不快感はあまり持たないけれど、圧倒的に不自然で、途方もなく不条理です。