Philip Sajetの続き。
最初に出会ったときにPhilipが語った話が今も自分の中に残っている。
彼が新作のシザーズを作っているところへ2人の女性がギャラリーにやってきて一緒にそれを眺めていたとき、私が 彼女たちに"あなたたちもアーティストなの?"と尋ねたら"学生だけどね"と応えた。
そのあと彼は手を止めてこう言った、
"私は非喫煙者です。数年前まで毎日大量のタバコを吸っていたけど今は吸っていない。だから私は非喫煙者です。"
そしてまた作業に戻った。
彼は当たり前のことを言ったんだけどあの空間をものすごく満たされたものにした。
まさかPhilipとこの先に続きがあるなんてその時は予感すらなく、あの場にいられてよかったな、と心から思いながら私はギャラリーをあとにした。
その後、Philipのムービーをストーリーズにあげたところ、Colombeさんからリアクションがあり、2人はまさかの知り合いだったことを知った。
2人のスタイルや拠点、世代の違いに、まさかここが繋がるとは意外だったが、ColombeさんがCSM在学中にPhilipが臨時講師として在籍しており、以降も交流を続けていたそうだ。
なんだか嬉しい。
いろいろな繋がり、交流を経て私は今年の9月にもう一度Philipに会いに、彼のいるアムステルダムを訪れた。
楽しみと同じくらい、いま自分の店で取り扱えるのかという大きな不安を抱えたまま。
それはVol.1で書いたことに尽きる。
ミュンヘンではひとつの作品しか見ることができなかった。たくさんの画像や情報を共有してもらったけどやっぱり実物を見ないとできるもできないも決まらない。
たぶん少し弱気になっているかもしれない。
Philipのご自宅兼スタジオは穏やかで整然としていてデザインがいたるところにあって、とてもよい空気が漂っていた。
たくさんの会話をしながら作品を見せてもらいそれは贅沢な時間だった。
Philipの言葉には初めて会ったときと同じで哲学があった。
それはジュエリーに向かう姿勢、作品、このスタジオ中に注がれている。
だめだ、私はここにのんびりする為に来たんじゃない。戦いにきたんだ。
作品を買うか買わないか決めないといけない。
だからこそ苦しい時間でもあった。
対称性と調和。
Philip Sajetの美学が宿る創造物は すべてが素晴らしく精巧で愛らしい。
しかし自分の解釈で捉えられるか、自分のファッションに持ち込めるか、これはまた別の文脈だ。
これはすべてのブランドやアーティストに対して等しく、選ばせてもらう上での責任だと思っている。
それぞれのビジョンが強いからこそ難しいし時間がかかる。こんな小さい店だけどとても大切なこと。
ジュエリーの文化、歴史は尊い。
だからこそこの選択は更に難しく時間を要したかもしれない。
それでもPhilipは待ってくれたし、できる限りの提案や可能性を引き出してくれた。
こうしてまた新しいジュエリーの世界をCasimir Pulaskiday.にお迎えすることができました。
左から
"Golden pearl ring" Gold,Enamel,Silver
"Gun ring" Silver
"Small floating blackstone ring" Niello on silver,Gold
"Necklace" Enamel on silveer,Gold
4つ。
間違っていない。この4つだ。
完璧に、ちょうどいい。
とあるインタビューでPhilipが言っていた、
ゴールドスミス(金細工職人)として習熟するには最低10年の経験が必要とされる、けれど創造力は無限で、その中では誰もが最初からそこに立つことができると。
それを読んで最初に会ったときのあの言葉に繋がった。
Philipからもらったいくつかの、割と多くの言葉を携えて自分のやるべきことをやっていく。怠惰はダメだって。
ありがとう。