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#175. Lili Barglowska


Lili Barglowskaはポーランドで生まれアメリカで育ち、現在はロンドンとワルシャワの2拠点で活動するジュエリーアーティストです。
2025年にCSM BA Jewellery Desinを卒業し、彼女のアイデンティティに刻まれた文化的、歴史的記憶の探求、考察を映すジュエリー制作を行なっています。

ずっと見てしまう。いつまでだって見ていられる。
ときの流れを忘れさせる美しさに秘められた忘れてはいけないときのこと。

War Memory I, II, III    2025
ラムの角、馬の毛、フリント、銅、鉄
この3つのブローチはLiliさんのひいお祖父様の軍功勲章が起源となる3連作品です。
ポーランドという戦争の記憶を深く刻まれた国に生まれたLiliさんとご家族にとって大きな意味を持ち大切に受け継がれてきたメダルは、歴史の記憶を持つマテリアルによって彼女自信の表現であるジュエリーという形と言葉で継承されました。

戦争は過去として終わることはない。
そして現在はその過去からそれほど離れてはいない。
世界中で恐ろしい出来事が絶えず起こる現代において、戦争(WW2)を実際に体験したお祖父様から語られた歴史を忘れないことは、過去を認めて現在に共感し、未来に希望を持つための方法だと彼女は話してくれた。
Liliさんの記憶、マテリアルが持つ記憶、形の記憶。
独立した個々の記憶を繋ぐこのWar Memory I, II, IIIの制作がLiliさんの未来への継承だとしたら、それらを所持して身につけることが"忘れないこと"へのレスポンスとなるしょう。
風に飛ばされそうなほどの軽さが返ってぐっとくる。

Hauntology Pearls II   2025
ラムの角、銅
-Hauntology-
ジャッ ク・デリダが『マルクスの亡霊たち』で提唱した、過去の社会的或いは文化的な要素が現在に回帰、持続し亡霊のように彷徨い続けるという概念。
ここからインスピレーションを得て同じく2025年に制作された作品で、Liliさん自身のポーランドとアメリカという2つの文化的背景と政治的感情の表現への取り組みです。
観察プロセスから導いた、保守的価値観の象徴としてのパールネックレスという着想からLiliさんは真珠のネックレスの亡霊を、人間の皮膚や爪と同成分である羊の角で再現しました。
かつての輝きを失ったかのような白濁した角の真珠は、過去から現在まで存在し続け、普遍性を呈して彷徨う保守的価値観のメタファーになり得ます。

"Ⅱ"であることから想像される通り"Ⅰ"がある。
より伝統的な真珠のネックレスの再現である"Ⅰ"に対し、角の野生的な性質にフォーカスして制作された"Ⅱ"を今回選びました。
とても迷ったけれど、"Ⅱ"により現代的な表現性を自分は感じたから。
でも"Ⅰ"もいい。

そしてもうひとつ、
Horse bit bracelet  2024
Silver
馬の口に挟む装具を模ったブレスレットも入荷しました。
上記2作とも親和性の高い、CPD.では今回唯一のLili Barglowskaのシルバーワークです。

どの作品も集中力の高い概念、素材、技術に私は日々胸が熱くなるばかりです。
作品に潜むLiliさんの洞察力、責任感、一貫性、中庸さ、まだいくつもあるんだけど特にこの点に惹かれるし尊敬する。
歴史的時間軸と社会的空間軸、そこから生まれるファンタジー的展開に質感ごと触れることで得られる感覚はとても大きい。

Lili Barglowskaさんに出会い作品を通して自分の中の随所で繋がり絡まりが解けていく実感がありとても有意義だと感じます。
彼女が語ってくれたたくさんの言葉から広がる展開や分岐からの学びと感情は今後更に拡張していくのだと期待する。自分に。

そんな自分のことより何より作品が素晴らしいのでできれば多くの方に実際に見ていただけたらと思っています。
大阪popupの前に書き終えられたよかった。読んでもらえるかが問題だが。
あとできればwan shan lingまで書きたいんだけど間に合わないかな。これでGwynn jagoからの3部作が完結する。
自分の中でものすごく繋がっていて間違ってないと確信している。

Liliさん、大切な作品を本当にありがとう。